幸せでいることの後ろめたさ-月刊「根本宗子」第18号「もっとも大いなる愛へ」

大体5年くらい根本さんの脚本演出の作品を観ている中で、スモールサークルの中でみみっちい言い争いから生まれる可笑しさが面白いとか、すごく具体的なあるあるネタに共感出来る。みたいなところから、最近は徐々に描かれる人物のシルエットが抽象的になっているように感じている。

今作は登場人物がどこの誰なのか、何歳で何をしている人なのか、そういうことはあまり語られなかった。2人の女の子が人と接する困難にぶつかって苦しみながら、人間関係の構築を諦めない、決して諦めてはいけないという内容だった。

 

わたしは人間関係を諦めた人間なので、今回の話を観ていると責められているような気になってしまってとてもつらかった。

 

 

4年前この記事に書いた友達と多分この時以来会っていなくて、幼馴染とおたくを除くと自力で作った唯一の友達だったので現在実質友達0である。

おたくは友達というより同士?のような感覚だし、幼馴染は気が合うから仲良くなったわけでなく幼少期にたまたま家が近い同学年の同性だったから今まで付き合いがあるだけだ。唯一の友達のLINEがいつのまにか消えていたのでもう連絡を取ることもできない。

 

わたしは友達をうまく作ることが出来ないのがコンプレックスである。闇の学生時代を送ったことも関係して未だに定期的に学生時代の同級生のSNSを調べてしまう癖がある。唯一の友達だった女の子(以下A)はリア垢がないので、執念で辿ってようやくアカウントを発見したのが約2年前になる。

Aはブログをやっていた。あまり更新されていなかったけど、わたしが昔に放ったらしい、自分で言ったことすら忘れていた言葉に呪われている内容の記事があった。

 

わたしは借金(奨学金)が嫌で進学せず高卒で就職したが、似たような状況だったAは奨学金を借りて4年制の大学へ進学した。1年生のころは文化祭へ遊びに行ったりしたので、関係はそれなりに良好だったように思う。地元が同じなので会う約束をしていなくても大学帰りとわたしの仕事帰りの時間が被って同じ電車で帰ることが何度かあった。

 

2年の始めごろにAに会った時、彼女は大学を休学していた。理由は特に聞かなかった。その半年後くらいにたまたま会ったときも 今も休学したままで、今度〇〇駅で歌でも唄おうかな〜と思ってる と言っていたのを聞いたとき、わたしは何もかもが全く理解出来なかった。

就職という選択肢があった中借金をわざわざして進学したにも関わらず休学する意味も理由も、想像力のなかったわたしには全く理解が出来ず、"このままでは復学出来なくなってしまうのでは?社会に適合出来なくなってしまうから復学しなよ"みたいなことを言ったと思う。

Aとはそれっきり会っていない。

 

 

Aのブログを勝手に読んで初めて知ったのは、程度はわからないけど恐らく彼女は発達障害を抱えていて、朝起きられなかったり共感性が低くて人間関係に問題が起こりがちだったということだ。休学したのにはそれに起因する理由があって、普通を装うことがしんどくて限界が来た、前に知り合いに言われた社会不適合になってしまうという言葉がその通りになった。というようなことが書かれていた。

 

わたしは何てことを言ってしまったんだろうと後悔した。LINEが分からないので唯一連絡手段があるとすればTwitterにいきなりDMを送ることだけだった。だけどそれをする勇気はなかった。

わたしはわたしのことを人の悪口を言ったりしない良い人間だと評価していたので、自分のかけた言葉で相手が追い詰められる想像なんて1度もしたことがなかった。これ以来ますます人間関係が怖くなって、結婚したこともあって夫以外の人間と話すことは殆ど無くなった。

 

 

人を傷つけるのは怖い。自分が掛けた言葉で、自分の想像力の無さによって相手を追い詰めるのはもっと怖い。わたしは今幸せで悩みもなく過ごしているので、例えば幼馴染の愚痴を聞いたり悩み相談をされたりしたら、生存バイアスのかかった意見しか言うことができない。

何か言葉をかけてもわたしは幸せな人間なので上から目線だと思われるかもしれない。トンチンカンなことを言うかもしれない。考えたらキリがなくて、恐ろしくなって帰省の度に誘ってくれる幼馴染の連絡も2回に1回くらいしか受けなった。

 

偏差値の低い高校を出たのち特に資格も必要のない事務に就職したけど、実家を出て結婚したし今のところ誰にケチもつけられないような人生を送っているだろうと言う自負がある。家計も2馬力なので余裕があるし、実家にいた頃よりも豊かなくらいだ。

もっと自分が不幸だったら誰と話しても今よりもっと上手くやれたかもしれないと思う。わたしのことを知っている人たちがこれを読んだら馬鹿にしてるのかふざけるなと思うだろうけど、私より人生上手くいってなさそうな人の近況はできる限り聞きたくないし、その点おたくは推しの話しかしないから気が楽だなと思う。

皆が惚気や自慢話ばかりしてくれたらどんなに気が楽だろう。

 

 

20歳になった瞬間に街コンに行くくらい私は結婚に執着があって、もっと言うと27歳くらいまでに結婚して30歳くらいまでに子供を産むというステレオタイプの考え方に執着があった。それを実行するために逆算して行動したし、全部上手くいっている。

幼馴染や友達の愚痴や悩みを聞いている限り、私の考え方ではそんな悩みは生まれないのでもっとこうすれば良いじゃんハラスメントしかできないのが私にとっても苦痛になっている。

もう夫とおたく以外の誰とも親しく出来ないし、誰かを傷つけたり怒らせるくらいなら関わりたくない。

 

 

自分語りが長くなったけど、そんなことを考えて生きている中での今回の作品はかなりバツが悪かった。根本さん本人が今回の話は説教くさい。と言っていたけど、本当にその通りだった。

多動・衝動のある子が、宇宙人みたい・何を考えているかわからないと言われることに苦しんでいること。それでも自分の言葉が伝わるまで決して諦めないこと、

注意欠陥が原因で鬱気味な姉をなんとか支えようとしている子。

根本さんが一体どこまでバランスを意識しているのかわからないけど今作は完全に発達障害当事者とその家族の話だったと思う。

 

もし夫と出会っていなかったら私も人間との関わりを諦めず頑張ることは出来ただろうか。何度か考えたけど、多分無理なので宝くじ1等が当たったことを自覚して極力失言をしないよう心がけながら夫にしがみついて生きていくしか無い。

スーパーストライクの時に「ネットで知り合って急激に仲良くなるような友達もいるけど、ある日急に会わなくなったりするような淡白な関係だし突然距離を詰めたからと言って親友になれるわけじゃ無いんだよ」みたいな台詞があった気がする。本当に耳の痛い話だな。

ねもしゅー再演してほしいランキング1位はスーパーストライクで2位は忍者、女子高生です。

 

今回はコンプレックスと諦めの早さを蒸し返されたような気分になってしんどかった。

叶うならばぼる塾みたいな関係性の友達がほしい。

 

 

おしまい