ねえ君は誰のもの? - PARCOプロデュース『プレイハウス』

ねもしゅーに通い始めて早4年、初めて初日の初回公演を観た。

ここのところTVで見るような著名な役者さんが出ることが多くなり、スズナリやBONBONではなく規模の大きな本多劇場公演が続いていた流れに乗って、今回は磯村勇斗くんとGANG PARADEのW主演、初の東京芸術劇場プレイハウス。会場の名前とかけてタイトルはそのまま『プレイハウス』、風俗嬢とホストのお話。


「プレイハウス」SPOT movie

PARCOプロデュース「プレイハウス」根本宗子×磯村勇斗×松隈ケンタ 座談会 (3/3) - ステージナタリー 特集・インタビューこの対談の中にあるけれど、根本さんの作品は"これはお前の話だぞ"と胸ぐらを掴まれるようなものが多い。今まで観劇後は重い鉛玉をおなかに撃ち込まれたような気になることが大半だった中で、近頃続いていた本多劇場公演がわたし自身にあまり刺さらなかった。共感し辛い世界の話だったので。著名な俳優を起用して作る話はわたしの求めるアッパー系の辛い話と相性が良くないのだなと思っていたので、また次も有名な人が出るやつかーわたしはスズナリとかでやってる少人数のやつが好きなんだけどなあと思っていた。んだけど、結果めちゃくちゃ面白かった。

今回は舞台が風俗店の待機所で繰り広げられるので境遇への共感はなかったけどGANG PARADE10人ひとりひとりに感情移入がしやすかったのでとても観やすかった。あとギャンパレのおたくの人たち観劇マナー超よくて驚いた、、

根本さんの作品のすきなところは、人間が追い詰められて、わーーーってわけわかんないことを口走るときのおかしさとか、さっきまでこことここが揉めてたのに気がついたらあっちと揉めてる!みたいな状況変化の目まぐるしさとか、四方から責められて開き直ってる人とか、物語終盤で流れを全部ぶっこわして無理やりまとめきるところとかなんですが、今回もそれは健在でとても楽しかった。ねもしゅーには珍しく今回はかなり綺麗にまとめているので終盤のぶっこわしはなかったけど。

人間って醜いけどそれでも愛すべき生き物である、みたいな感情が生まれるところが何よりの魅力で、今回のお話は男のエゴイズムに巻き込まれた10人の風俗嬢たちの物語。基本的にクソ男が出てくる話が多いけど、その影に隠れて女の子たちもまあまあ負けてないのがねもしゅーなので、今回のお話もクソ男×3にやべーな!!と思いながらまあでも女性陣も大概だけどね…と外野で眺めながら感じていた。

 

ギャンパレの女の子たちは全員風俗嬢の役で、ショーがある風俗店で働いている設定なので歌って踊る。ショーの時間以外もミュージカルみたいに歌って踊りまくるので、さながらライブのようになっていてめちゃくちゃ沸いた。ギャンパレ全員歌が上手だった。初めてねもしゅーを観に行ったとき開演前BGMにBiSHが流れていて、この曲*1良いなと思ってアプリで検索して以来WACKはBiSHのみ聴いているので、ギャンパレは名前だけしか知らなかった。まじで生歌超良かった。いそむらくんはここ最近でわたしの一番好きな"よくTVに出ている俳優"*2なのでプレイハウスの情報が出た時は完全優勝じゃんと思った。

 

ミキは小さな頃から隠し事が癖。
幼稚園の頃から思っていることを周りの子みたいに正直に口に出来なかった。
そんな彼女が20歳を過ぎ、東京に出てきて出会った街は新宿、歌舞伎町。
時が経ち、引っ込み思案だった彼女がついた職業は歌舞伎町の風俗嬢だった。
幼少期からとにかくモテて、人からちやほやされることしか経験せず育った聖也。
ビジュアル系バンドの追っかけをしていた母の影響で、小学生の頃からホストのような出で立ちだった彼は、時を経て歌舞伎町一のホスト、一ノ瀬聖夜となっていた。
全く真逆だった二人の人生が運命に導かれ歌舞伎町で交差する時、ミキは人生最大の嘘をつくことになる。
ホスト、ドラック漬けのジャンキー、ホテルの掃除婦、サラリーマン、そして風俗嬢。彼らがここでしか生きられない理由とは。
 
「世界地図で見たら私の小指の爪より小さなこの街が、私のすべてだ。ようこそ、みんなの遊び場、歌舞伎町プレイハウスへ。」

プレイハウス | PARCO STAGE -パルコステージ-

いま初めてHPのあらすじ読んだけど本編で知り得ない情報が書いてあってびっくりしちゃった…このあらすじが出たときからかなり脚本の変更があったんだろうけど、実際のところはここに書いてあるような歌舞伎町24時みたいなやばい話ではない。揉め事は風俗店店長の3股と、ホストのNo.1と2の入れ替わりと風俗店店長が飛んだことくらいなので。

 

今回のMVPは完全に猫背椿さんなんだけども、猫背さんは主人公ミキの分身を演じている。心の声の代弁者で、決して他人に打ち明けないミキの心境が猫背さんの口によって観客だけに伝わる。

いままで、根本さんの演劇に出てきただいたいの女の子たちの思考回路がわたしには理解出来なかった。好きな男に縋り付いたり激昂してヒステリーを起こしたりする感情の引き出しがわたしにはないので。自分が恋愛をちゃんとやらないできてしまったので、そんな男早く忘れて次に行った方が効率よくない?などと思ってしまい、直接的な共感とか理解は全然出来なかった。ただわたしは俳優の熱心なオタクだったので"特定の誰かに執着する"という部分のみで今までのねもしゅーに共感を得ていた。

そして今回、主人公の女の子が人に相談しない、自分のことを一切他人に話さないタイプの人間だったので、わたしはこれまでにない共感を得られたのだった。自分のことを話したくないわけではないんだけど一連の流れを話すのがとにかく面倒だし見当違いの意見が返ってきたらイラつくし後報とか伝えた方がいいのか?とか考えただけで面倒くさくて結局家族にすらなにも言わないみたいな。わたしは誰かに話したい気持ちが強すぎるにも関わらず極度の面倒くさがりで更に他人の意見を聞きたくないといういう理由でこのブログをやっているけど。

それでミキの心の声を一人でひたすらぺちゃくちゃ話してるのが猫背さん。まーーーーよく喋るわけ。わかる。何も考えていないわけじゃないんだよね。心の中であーだこーだ色々考えて悩みもまあ無いことはないけど相談するのは怠いから一人で考え込んで、外部の意見が入ってこないから結局解決しないし時間が経ってどうでもよくなるのを待つか、たまたま何らかの拍子に解決することもあるけど。

とにかくずっとミキと猫背さんの自分内会議をわかるわーとずっと思って聞いていた。

 

今回は物語があるようでいてそこまで大層な出来事はなく、風俗店が舞台ではあるもののミキの物語について、風俗嬢であるという設定はこれといって重要ではなかったと思う。物語を動かすためのアイテムであって、ミキ以外の登場人物たちは歌舞伎町に翻弄されていてみんな歌舞伎町に根付いちゃってるけどミキだけは違うように見えた。性的なことに興味があって、家庭環境が良くなかったので流れで高卒風俗嬢になったけどホストに貢ぐでも借金があるわけでもなく、ただ好きで仕事しているだけ。無遅刻無欠勤だし。ミキにとっての歌舞伎町はただの職場だった。それが聖夜(磯村勇斗)の登場でそうではなくなってしまったんだと思う。

歌舞伎町No.1ホストの聖夜は無理やりミキのいる風俗店に連れてこられて、ミキを指名したと思ったら何もせず帰り、家に呼ばれても何もされず、トイレットペーパーが三角に折られていたので他にもSEX担当(多分)の女がいるんだな、自分は添い寝担当なんだろうと納得して、でもなんでわざわざわたしなんだ????と自問自答して。この自問自答が1時間くらい続くわけ。舞台上での1時間なので実際はかなりの日数があると思うけど、聞けば済むことを聞かないために一人で一生悩んでるところがかわいくもありつつめちゃくちゃしょうもなかった。トイレットペーパーが三角に折られてた理由は更にしょうもなかったけど。

 

ホストとその手下と風俗店店長が今回クソ男の立場を振られていて、自分のエゴ丸出しでほんとうにろくでもなかった。プライドのために人の人生めちゃくちゃに出来ちゃう類の人間だったので、3人に職場をめちゃくちゃにされた風俗嬢たち9人で最後の希望である聖夜の家に乗り込む流れが超アツかった。なんでミキちゃんとSEXしないんですか?って聞きに行くためだけの特攻、しょーもなさすぎて良い。聖夜いい奴でよかったな。ミキを選んだ理由もSEXしない理由も本当に知らんがなみたいなみみっちい理由だったけど男側の目線だと超重要なんだと思うし可哀想だった。可哀想で可愛かった。

 

結論聖夜がいい奴(?)だったので、これまでになくフレッシュに結末を迎えて、激アツなギャンパレの生歌と相まって超最高の観劇後感だった。いつもお腹に撃ち込まれていた鉛玉が今回は無い!!これは凄いことだ。聖夜かわいいじゃん…と、ギャンパレ最高!!!という感情のみ。劇中曲が殆ど既存曲だったのでプレイリスト作って一生聴いてる。

4年くらいずっと同じ作演出の作品を見続けるという経験が他にないので、前のあの作品のあの場面がパワーアップして帰ってきたな、と思うことが根本さんの作品を観ていると多くて楽しい。以前『超、今、出来る、精一杯。』で長井短ちゃんがローラのものまねみたいなポンコツハーフ役で、それが実はハーフ顔は整形でキャラもゴリゴリに作ってましたというオチだったんだけど、今回のそんなようなポジションを栗原類くんが演っていた。

 

半年前くらいに松たか子瑛太の『世界は一人』という音楽劇を観に行ったんだけど今回のねもしゅーはこれのオマージュみたいだなあと思った。普段あんまり演劇観ないけどたまに観に行くと大体現実現実現実現実って感じで辛いやつばっかりなので今回のねもしゅーくらいアッパー系のお祭りみたいなやつがもっと観たいよ、、、。そういうのどうやって探したら引っかかるのか教えてほしい。ここのところのねもしゅーが家族の話が多くて、最近結婚した私にとってタイムリーではあるんだけどしんどい話だったので今回くらいの軽さのやつもたまに挟んでくれないと通えないから良かった。

 

いそむらくん最近見ようと思ってたドラマにたまたま出ててラッキー🥰みたいなこと結構あるので、ねもしゅー出るとかまじで奇跡かと思った。そろそろ多部ちゃんにねもしゅー出てほしいです。

 

おしまい。

 

*1:Lonely Girl

*2:すきな俳優部門は"よくTVにでている""出ていない"の2部門ある