アラジンにまつわる記憶

中学校に上がった時、だいたい3箇所くらいの小学校が集められて一学年が形成されたけど、学区の関係でわたしの通っていた小学校からは20人くらいしかその中学校には行かなかった。

わたしには幼稚園のころから付き合いのある幼馴染が3人いて、わたしを含めて皆同じ中学校に進学した。小学校の頃のわたしはというと、人生のモテのピークを迎えた時期であり、無敵だった。何しろモテたので自己肯定感の塊であり、気が強かった。幼馴染たちは全員次女だったためか全員めちゃくちゃ気が強かったのでその中で強くたくましく育った。

しかし小学校高学年の頃から雲行きが怪しくなってきた。わたしは好き嫌いがめちゃくちゃ多かったので、給食居残りで小学校6年間ほとんど昼休みがなかったりしたのだが、それに加えてまず運動神経の面で差が出てきた。丸太が2.5mくらいの高さに組み上がった遊具で鬼ごっこをする、とかがまじで怖すぎて意味がわからなかった。もう少し低学年のころは無敵の女だったので私が嫌だと言ったら違う遊びになったりしたのだが成長するにつれてそういうわけにもいかなくなり、みんながしている遊びに混ざれない機会が多くなった。そんなわけで本を読むなどの身体を動かさずできるコンテンツに向かうようになった。内向的なオタク化の始まりである。

そんな高学年を終えて中学校に入学すると幼馴染たちは全員運動部に入ってしまい、わたしは運動部なんてまじでムリと思ったので文化系の部活を探した。なんとびっくり3択しかなく、音楽系か演劇部だったので一番活動熱心じゃなさそうな演劇部に一人で入った。

母校の演劇部は毎年部員が5人くらい入部する程度の弱小部だったのだが、なぜかわたしの代だけが20人程入部し、たちまちに黄金期を迎えた。多分わたしと同じように考えた人が多かったんだと思う。

そして、その20人の中には同じ小学校出身の女の子が2人いた。内ひとりは同じクラスだった。その2人は小学校時代から大の親友同士で、ディズニー大好き仲間でもあった。わたしは同じ小学校出身で同じクラスに同じ部活でこれは都合がいいぞと思ったので、取り入るようにして同じグループとなった。ほかの小学校の人ばかりで知らない人だらけだったのでそんな中で知った顔がいるのはとても心が落ち着いた。ちなみに同じグループには演劇部関係で仲良くなったあやぽんという女子もいた。あやぽんは非常にコミュ力のある女の子で、長くダンスを習っていたらしい強めの人だった。よそもの2人(わたしとあやぽん)を含む4人組だったので、親友コンビに取り入ったわたしも学校生活においては肩身の狭い思いはしなかった。

 

問題は部活終わりの帰り道である。

あやぽんは小学校が別なことからも分かるように自宅が全くの逆方向だったので、必然的に親友コンビとわたしの3人で帰ることになった。最初の頃はクラスどう?とか、あの先輩はああだよね、とかそんな雑談だったように思うけども、いつしか親友コンビがディズニーの歌をハモッてくるようになった。本当に心からディズニーを愛している女の子たちだったので、わたしの全く知らないような歌をいつも歌っていた。歌いながら帰るというの、本当に中学生女子という感じがするんだけれども、週に1回か2回くらいはそのタイムが訪れていたのでそのターンのときはいつもわたしは無言で2人に並んで歩いていた。

その中で一番歌われる回数が多かったのが、アラジンの曲である、"A Whole New World"だった。日本語訳バージョン。正直言ってわたしはディズニーに全く興味がなく、映画も大人になってからネイルサロンのテレビでついてたら観るくらいで、しっかり1本観た映画はおそらく一つもない。ディズニーとはほど遠い人間なのだ。親友コンビが気持ちよくディズニーの曲を歌っているのを横で聞いている時の、あの悲しいでもむかつくでもない謎の感情を、ここ最近のアラジンのCMやニュースなどを見ていつも思い出している。

親友コンビは声の高い子と低い子のペアだったし歌もすごく上手だったので聞くことが自体は全く不快ではなかったんだけども、わたしという存在が透明になっているような感じでいつもなんとも言えない気持ちになっていた。あれだけ何度も聞かされたらA Whole New Worldは流石に覚えたので、今日はじめて観た金ローのアラジンに合わせて大声で歌いました。歌詞の字幕がついてなかったのでところどころしか歌えなかったけど、このしょうもない中学校時代の話を知ってる夫がちょっとウケてくれて良かった。

 

中学を卒業してから一切連絡をとっていなかったけど、成人式が終わってから一度だけ親友コンビと3人で会ったことがある。そのときにインスタの相互フォローをしたんだけど、遡って観たら中学卒業の15歳から20歳までの間に2人は死ぬほど会っててうけた。本当に本当に仲良しだったコンビに無理に混ざったものの、結局なんか違うなとなってしまい卒業を機に連絡を絶ったわたしとの違いを見せつけられた。それ以来会っていない。親友コンビの片方はわたしが結婚した数ヶ月後に結婚したとインスタに書いてあった。わたしはインスタに自分の結婚のことは何も書いていないので今後彼女たちがわたしについて知ることは無いんだろうな。わたしのことを思い出すこともそもそも無いんだろう。

 

先週、有給を取って20年ぶりくらいに家族全員揃ってディズニーランドに行った。ちょうど七夕初日だったらしい。パレードを初めて最初から最後まで観ていたらプリンセスがたくさん出てきてパレードの最後尾にアラジンとジャスミンが出てきてああこれかあと思った。パレードはテーマはよくわからなかったけど最高だった。乗り物に乗って写真を撮ってくれるやつの写真を、どんなにうつりが悪くとも買おうと思っていたらスプラッシュマウンテンが休止の為買うことが出来なかった。今生の思い出としたかったのでつらい。これはもう全員でシーに行くしかない。

ディズニーランドは楽しいし今日の金ローのアラジンは結局最後までは観てないけど面白かったです。南無。

ホール・ニュー・ワールド (新しい世界)

ホール・ニュー・ワールド (新しい世界)

おしまい。